これまでの人生で、コクヨのノートを使ったことがない。
日本に住んでいて、こういう方に出会うのは天文学的に低い確率でしょう。
日本一ノートを売るコクヨ株式会社。
その販売数はなんと年間1億冊にも上るそうです。
本書はコクヨ社員の100通りのノートを公開し、結果を出すためのノート術、もしくはそのヒントを生のページで見せています。
ノートのトリセツはどこにある
当たり前ですが、すべての家電製品には取扱説明書があります。使用目的を果たし、効果を得るためには取扱説明書のとおりに使う必要があります。さもなければ、故障やトラブルの原因になりかねません。
一方、ノートにメーカートリセツなど存在しません。
何のために、どう使うかは全くユーザーの裁量の範囲です。
言い換えればユーザーの数だけルールがあり、ユーザートリセツが生み出されるはずです。
しかし自由ゆえに使い方が定まらず、目的が果たせない場合もあります。
本書はこうした問題にも応えており、メーカーの顔と試行錯誤するユーザーの顔を併わせ持つ社員のノートに光を当て、他のノート術本とは違う臨場感が漂っています。
着るものを選ぶようにノートを選ぶ
決してその日の気分でノートを選ぶということではありません。本書では使用目的に応じて、方眼、横罫、無地ノートに使い分けることを意味します。
例えば図解記録や論理的に思考をまとめる場合は方眼ノート、情報のストックは横罫ノート、アイデア出しなど発想力を高めるなら無地ノートといった具合です。
方眼ノートだけで50通りの使い方があるのですが、かの「測量野帳」が2割近い登場率を占め、コクヨ社員にも人気であることがわかります。
無地ノートではイメージ図やふせんの使用が一気に増え、あたかもノート上でブレストしているかのようです。
本書に登場するノートの商品名記載は100%ではありません。価格にいたっては記載なしです。さらには、まさかの他メーカー商品、モレスキンとニーシモネまで登場します。これは本当に予想外でした。
こうした点からも、商品自体ではなく、ノートの使用方法と行動に重きを置いていることがわかります。
ユーザーと歩みを共にするノートづくり
ノートで有名なコクヨの社員さんって、どんなノートの使い方をしているんですか?読者の立場からすれば、本書は実に面白い企画の上に成り立っています。
しかしコクヨにとっては、社員のノート公開という形でユーザーの質問に答えることにある種のリスクが頭をよぎった筈ですし、社員自身もそうであったと推測します。
それでもなお、社員が結果を出すために日々積み上げたノートの公開に踏み切ったコクヨ株式会社。
本書からノートを愛する心だけでなく、ノートを通してユーザーの力になり、歩みを共にするスタンスが感じられました。
100のノート術はすぐに実行できるものばかりです。
本書から、ぜひ気になる方法を探してみてください!
コクヨ株式会社 KADOKAWA 2016-12-24