「なかなか進まないが、問題解決しなければならない」
「いくつか手を打ってきたが、解決には至らない」
ビジネスの現場で起こるこうした声。
ともすれば、未来永劫続くのかもしれません。
その原因を示す、ある偉人の言葉が横田尚哉さんの最初の著書に紹介されています。
いかなる問題も、それをつくりだした同じ意識によって解決することはできない(アルバート・アインシュタイン)
問題解決のコンサルタントとして、30年以上クライアントの問題を解決してきた横田さん。多くのビジネスパーソンや企業そのものが、うまく解決できない理由を2つ挙げています。
- 問題の種類、解決のメカニズムを正しく知らない
- 思考を助ける道具を十分に使いこなしていない
本書は、問題解決をする側自身が抱える問題に、正しい知識と理論、解決スキルを示すものになっています。
本書の問題解決の手法は、1947年に開発されたファンクショナル・アプローチがベース。思考原理は次のとおりです。
すべてのモノ(現物)やコト(現象)には、必ずファンクション(機能、役割、効用、意図など)がある。問題となっているモノ・コトの「カタチ」から離れ、本質となる「ファンクション」を足がかりに思考する。ファンクションを捉えるとき、「これは誰のため、何のため」を繰り返し、答えが出ないところに問題と解決ポイントが存在する。
ファンクショナル・アプローチの原理については、横田さんの過去の著書で詳しく解説されています。本書では原理を簡潔にまとめ、解決スキルにフォーカスしています。
問題解決を面白くする未来思考
問題発見後に「分析」「創造」「洗練」の3ステップを踏むのですが、分析まではファンクショナル・アプローチの思考原理によるものです。面白さが顔を覗かせるのは「創造」の段階。
過去の事例分析から仮説検証法で解決しようとせず、解決策をイチから創り仕上げる段階です。
ある意味、その企業の慣習や思考メソッドを上書きするかもしれません。
しかし根本的な問題解決に至らない理由が、冒頭に述べたアイン・シュタインの言葉にあるとするならば、取るべき選択肢はおのずと決まるはずです。
ここではヒラメキを人為的に起こりやすくする方法や、アイデア発想法を活用することなどが挙げられています。
面白いことに、このヒラメキやアイデア発想については、28年前に読んだジェームス・W・ヤングの「アイデアのつくり方」に通ずるものを感じました。
例えばそれは、新しい組み合わせを生む才能が事物の関連性を見つけ出す才能によって高められることだったり、常にそれ(アイデア)を考えていることだったりします。もちろんビジネスの現場ですから、その手法は科学的であり、スキルとして成立している必要があります。
こうした創造のステップは、問題解決のプロセスをクリエイティブなものにします。問題解決は単なる欠点の補修作業ではありません。新しい思考とアイデアで理想のファンクションを得ることが、面白さにつながると横田さんは指摘します。
どんなビジネスパーソンも企業も、何かしら解決すべき問題、あるいは改善すべき課題を抱えているもの。そんなとき、本書から問題解決の原理と方法を学び、実践することがきっと手助けになるはずです。
過去の思考感覚や意識を手放し、未来思考へシフトさせる。
まずはご自身の部署で、あるいは参画しているプロジェクトなどで是非試してみてください。
最後に、本書を読み、改めて深く認識した言葉をご紹介しておきます。
「アイデアのつくり方」より
どんな技術を習得する場合にも、学ぶべき大切なことはまず第一に原理であり、第二に方法である。これはアイデアを作り出す技術についても同じである(ジェームス・W・ヤング)
本書「問題解決で面白いほど仕事がはかどる本」より
意識を変えることは、問題解決において極めて重要な一歩である(ローレンス・D・マイルズ)